ケトン性低血糖症 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

ケトン性低血糖症(けとんせいていけっとうしょう)

執筆者: 長尾 芳朗

概要

 ケトン性低血糖症は1歳6ヶ月頃から5歳頃までに認められる疾患で、この時期の低血糖の原因として最も頻度が高いとされる。理由は不明だが最近20 年間にこの疾患の頻度は減少している。臨床症状は低血糖の症状が基本であり、糖の補充によって臨床症状は改善し、予後良好な疾患である。

病因

 ケトン性低血糖症の原因は不明であるが、比較的痩せ型の幼児が、心身の不調によって食欲不振に陥ったり、夕食を摂らずに就寝したりすることがきっかけで、一時的な飢餓状態になり、血糖値が低下することにより発症すると考えられる。低血糖の度合いにより、症状も元気がない程度の軽症からけいれん・昏睡などの重篤な症状まで様々である。

病態生理

 ケトン性低血糖症は飢餓状態が誘因になって発症すると考えられるが、その病態生理は以下の様に説明されている。飢餓状態が短時間である場合、血糖値はアドレナリンとグルカゴンの刺激により肝臓のグリコーゲンの分解で維持され得る。幼児はグリコーゲンの蓄積能が低い割合には、筋肉や脳での血糖の消費が盛んであるため、飢餓状態にするとグリコーゲン分解による糖の供給は容易に不足状態に陥りやすい。グリコーゲンの分解による血糖値の維持が限界になると、生体はGHとコルチゾールの刺激により蛋白質と脂肪を分解して糖新生を行うことで血糖値を維持しようとする。糖新生の主要な場である肝臓では遊離脂肪酸分解(β-酸化)によって生成されるNADHをエネルギー源として利用し、アラニン、乳酸、グリセロールなど原料にして糖新生が行われる。肝臓のミトコンドリア内では、NADH 濃度が高くなるため、脂肪酸分解によって生成されるアセチルCoAは、TCA回路で代謝されずにケトン体合成に利用される。肝臓で生成されるケトン体は他の臓器でエネルギー源として利用することも可能であるが、ケトン体の生成が急激であるとケトーシスの状態となると考えられる。

臨床症状

 ケトン性低血糖症の臨床症状の基本は低血糖である。(表2)に低血糖の症状を示した。




 表2. 低血糖の臨床症状


検査成績

 血糖値の低下及び血中や尿中のケトン体の増加がみられる。しかし、ケトン性低血糖症は(表1)にあげるような内分泌・代謝性疾患の除外された後に診断されるべきであり、確認すべき検査項目は以下のようになる。





 表1. ケトン性低血糖症の鑑別疾患


●血中インスリン値低下



●乳酸、ピルビン酸値正常



●血中アンモニア正常



●GH、コルチゾール、遊離脂肪酸、ケトン体上昇



●血中アミノ酸分析でアラニン値の相対的低下



●甲状腺機能正常



●遊離カルニチン、総カルニチン正常、アシルカルニチンの脂肪酸炭素鎖分布正常



●低血糖時のグルカゴン負荷に不応



●ADH正常



 低血糖出現時に検査をする機会が得られない場合は、16時間から24時間の絶食試験をする場合がある。ただしこの検査の前にはカルニチン、アシルカルニチンが正常であることを確認しておかなければ危険である。

治療

 軽症の場合は経口で糖分を少量ずつ頻回に与える。嘔吐などのため経口摂取が困難な場合や中等症~重症の低血糖には20%ブドウ糖液を2mg/kg静注し、引き続き5~10%の糖濃度を含む輸液を血糖値が正常化するまで行う。

予後

 ケトン性低血糖症は予後良好な疾患であり、加齢とともに寛解する。

(MyMedより)推薦図書

1) 堀川玲子・安達昌功 著、田苗綾子・前坂機江・田中敏章・横谷進・立花克彦 編集:専門医による新小児内分泌疾患の治療,診断と治療社 2007

2) 小児内分泌学,診断と治療社 2009

3) 五十嵐隆 編集:小児科学,文光堂 2004
 

免責事項

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