十二指腸がん - MyMed 医療電子教科書

MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.11.30

十二指腸がん(じゅうにしちょうがん)

執筆者: 小棚木 均

概要

 十二指腸は右上腹部の胃と小腸の間にあって、指を12本並べた分の長さ(約30cm)に相当することからこの名があると言われる。



 大部分が後腹膜に存在するため可動性はない。十二指腸はその走行形態から4つの部に別けられる。中央部には十二指腸乳頭部が存在し、ここに胆管と膵管が共通管となって開口する。この十二指腸乳頭部から発生したがんは通常、胆道がんとして取扱われるので、それ以外の十二指腸粘膜から発生した悪性腫瘍 (腺癌)を十二指腸がんと呼ぶ。消化管に発生するがんの中では0.3~2.9%を占める比較的まれなものである。上述の4つの部位のいずれにも発生するが、日本人では乳頭の口側に発生するものが多いと言われる。

病因

 がんの病因は一般的に遺伝子異常と言われるが、十二指腸がんにおいてどのような異常が起こっているかに関しては現時点で不明である。ただ、がんの発生過程として、1)十二指腸粘膜から直接がんが発生、2)十二指腸腺腫(いわゆる十二指腸ポリープ)の癌化、3)十二指腸に迷入した膵組織の癌化、4) Brunel腺過誤腫の癌化などが可能性として挙げられている。この内、十二指腸がんの80%は腺腫成分を伴うことから腺腫からがんになるものが大部分と考えられている。なお、遺伝的に大腸ポリープが多発する大腸腺腫症では高い頻度で十二指腸ポリープと十二指腸がんが発生することが知られている。

臨床症状

自覚症状


 早期がんでは症状を呈さない。進行癌になっても十二指腸がんに特徴的なものはなく、腹痛、吐き気・嘔吐、体重減少、貧血などを認めることがある。がんの浸潤が乳頭部に及ぶと胆汁の出口を塞くため閉塞性黄疸を来す。

他覚症状


 上述のごとく、貧血や黄疸を認める場合がある。便潜血反応陽性として発見される場合もある。

検査成績

 バリウムを用いた造影検査で十二指腸壁の不整や狭窄、陰影欠損像などを認める。


図1 上部内視鏡検査では通常、十二指腸の内腔に突出する腫瘍を認める。

図2 腹部CT検査やMRI検査では十二指腸壁の肥厚として認められる。

図3 進行がんの多くは採血検査でCEAやCA19-9などの腫瘍マーカーが高値を示す。

診断・鑑別診断

 十二指腸がんの診断は内視鏡検査を行って腫瘍の形態等を観察すればほほ下されるが、内視鏡の中を細い鉗子をとおして腫瘍の一部を採取し(生検)、顕微鏡検査することで確定される。

生検: 内視鏡から通した鉗子で腫瘍の一部を採取

 鑑別すべきものとして、良性では、十二指腸の腺腫や粘膜下腫瘍(脂肪腫、平滑筋腫、異所性膵)などが、悪性では、平滑筋肉腫、GIST、悪性リンパ腫、カルチノイドを含む内分泌腫瘍などが挙げられる。がんが上述の乳頭部に及ぶ場合は、乳頭部がんとの鑑別も必要となるが、この場合、十二指腸がんが乳頭部に及んだものか、乳頭部がんが十二指腸に及んだものかの鑑別は実際的には困難である。また、膵癌の十二指腸浸潤も念頭に置かなければならない。

治療

 内視鏡先端に超音波発生装置が付いたたものでがんの浸潤の深さを調べる検査(超音波内視鏡検査)等を行って、がんが粘膜内に止まっているm癌と診断された例に対しては、発生部位によらず内視鏡的粘膜切除が行われる。開腹を必要としないため身体への負担(侵襲)が少ない。がんの浸潤が粘膜下層まで達したsm癌に対しては、そのリンパ節転移率が3.5~5.4%であり、また次に述べる膵頭十二指腸切除術の過大な侵襲を避ける目的から開腹して十二指腸部分切除術が行われる。がんの浸潤が十二指腸壁の筋肉の層およびそれより深くまで及ぶ進行癌に対しては、球部の場合は病変を含めた胃切除術が行われる。それ以外は膵頭十二指腸切除術が標準術式になる。

 図6-1. 膵頭十二指腸切除術の切除範囲

 図6-2. 切除標本の実際

 進行癌の切除率は50~70%とされる。がんの浸潤が他に及んだり、肝臓や肺に転移を有するようながんでは、もはや切除の対象外になる。ただし、その場合でも、がんからの出血や腫瘍による腸内腔の閉塞を予防・解除するため胃空腸吻合が行われ、また、閉塞性黄疸をきたす例に対しては胆管空腸吻合が行われる。

 ただ、これら内視鏡治療の適応、外科手術にどのような術式を選択するか、そして、その際どこまでリンパ節を郭清するか等に関しては症例数の少なさから十分な解析がなされていない、このため、未だ広くコンセンサスを得た治療法とは言い難く、病院間の違いは存在する。抗癌剤治療に関しても現時点で有効と確定されたものはないが、胃がんや大腸がんに準じて5-FU系薬剤が用いられることが多い。

予後

 内視鏡的粘膜切除あるいは十二指腸部分切除で切除された早期がんの予後は極めて良好である。一方、膵頭十二指腸切除が行われた進行がんの5年生存率は25~60%とされている。治癒切除後の再発形式は、肝転移、リンパ節転移、腹膜播種のいずれも認める。非切除例の2年生存率は20%以下である。

最近の動向

 進行がんに対する手術では、胃を約2/3切除する従来の膵頭十二指腸切除術に代えて、全胃を残し胃機能を温存した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行う病院が増えて来ているようである。

参考文献

1) 生越喬二:腫瘍外科治療の最前線.28.十二指腸癌.外科治療 96: 473-481, 2007

2) 尾上俊介、他:原発性十二指腸癌自経例10例の臨床病理学的検討.日本消化器外科学会雑誌 39: 1458-1463, 2006

3) 大内慎一郎、他:原発性十二指腸癌術後の腹膜播種にTS-1投与が有用であった1例.癌と化化学療法 32: 1179-1181, 2005

(MyMedより)推薦図書

1) 笹子三津留 著:胃・十二指腸 (みる・わかる・自信がつく!消化器外科手術ナビガイド),中山書店 2009

2) 松野正紀 監修、畠山勝義・兼松隆之・佐々木巌 編集:消化器外科手術のための解剖学食道,胃・十二指腸,腹壁・ヘルニア 改訂版,メジカルビュー社 2006

3) 尻久雄・小山恒男 編さん:食道・胃・十二指腸診断 (症例で身につける消化器内視鏡シリーズ),羊土社 2009
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷

診療科別


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: