乳腺葉状肉腫 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

乳腺葉状肉腫(にゅうせんようじょうしゅよう)

執筆者: 森 正樹

概要

 葉状腫瘍は楕円形のやわらかい腫瘍で、2~3ヶ月単位で比較的速く大きくなることを特徴としている。触診所見、超音波所見、マンモグラフィー所見はいずれも良性腫瘍の線維腺腫と酷似しており、診断は病理組織検査(切除または針生検)が必要である。葉状腫瘍は乳腺組織を構成する上皮細胞と間質細胞のうち間質細胞から発生する。このため葉状腫瘍は肉腫の系統に属する。

病因

 葉状腫瘍は乳腺組織を構成する上皮細胞と間質細胞のうち間質細胞から発生する。乳癌は乳腺の腺管上皮から発生するが、葉状腫瘍は腺組織を囲む間質 (かんしつ)細胞が腫瘍化したものであり、生物学的には血液や骨などの腫瘍に近い性質のものである。葉状腫瘍は病理組織所見により悪性葉状腫瘍と良性葉状腫瘍に分類されるが、その分類は必ずしもその後の経過を反映しない。

病態生理

 急速に増大することが特徴の乳腺腫瘍。発症は10代から50代まで認めるが、30代の女性に多い。間質を構成するあらゆる部分が肉腫になるが、悪性化した由来の細胞により、分類され線維肉腫(せんいにくしゅ)、脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)、血管肉腫、リンパ管肉腫、悪性葉状(ようじょう)腫瘍などに分けられる。いずれにおいても原因は不明。

臨床症状

 楕円形のやわらかい腫瘍で、数ヶ月(2−3ヶ月が多い)で比較的速く大きくなることが多い。外来で患者に問診をとると、「ここ数週間で急にオッパイが大きくなり、下着が合わなくなった」と言われることが多い。痛みを訴えることは少ない。触診所見、超音波所見、マンモグラフィー所見はいずれも良性腫瘍の線維腺腫と類似しており、診断は病理組織検査でなされる。針生検、組織生検が必要となる。

検査成績

 肉腫に特有の画像診断の所見はない。多くは、良性の腫瘍のような孤立性の巨大な腫瘤像を示す。超音波検査で分葉状構造があれば、葉状腫瘍が疑われる。針生検でも確定診断がつかず、手術によって切除した組織を電子顕微鏡で検査してはじめて診断できる例もある。

治療

 外科手術が基本となる。乳癌と違って放射線、ホルモン療法は有効性が乏しく、抗癌剤治療にもあまり効果が認めらない。このため初回治療は通常手術による腫瘍の完全切除(腫瘤からマージン1cm以上をおいた腫瘍切除)が原則となる。いわゆる悪性葉状腫瘍と診断された場合は約4分の1が遠隔再発するといわれる。またリンパ節に転移することはまれであるため、リンパ節を切除する手術はあまり行われない。このため完全な局所切除が初回治療の原則となる。腫瘍が大きければ乳房全摘手術が必要となることもある。局所再発は通常再手術により治療可能(治癒する可能性も高い)だが、局所再発が遠隔再発の引き金になる可能性も完全には否定できないため、初回手術での腫瘍の完全切除が重要と考えられている。

予後

局所再発について

 最終的に葉状腫瘍の約20%が局所再発する。初回治療から局所再発までは平均2年程度と報告されている。またリンパ節に転移することはまれであるため、リンパ節を切除する手術は行っていない。このため完全な局所切除が初回治療の原則である。

遠隔再発について

 葉状腫瘍をすべて含めると5%以下の確率で肺などに遠隔再発し致命的になる。いわゆる悪性葉状腫瘍と診断された場合は4分の1が遠隔再発を来す。一方良性葉状腫瘍もまれに遠隔再発するため必ずしも良性とは言い切れない。

最近の知見

治療成績:


A) Confavreux Cらは悪性乳腺葉状腫瘍と乳腺肉腫の手術成績について報告した(Eur J Cancer. 2006 42:2715-21)。(両方合わせて)70例の症例のうち35例の再発が生じ、DFSの中央値は1.5年、3年目の両者に生存率の差はなく、61%以上の症例が生存した。また、切除断端は生存率に深く関与しており、断端陽性と陰性症例間に予後の差がみられた(p=0.036)。また、組織系も予後を決定する上で重要であり、 grade I と IIの葉状腫瘍 (DFS=57%)、血管肉腫 (DFS=7%)、およびgrade IIIの葉状腫瘍と他の乳腺肉腫は (DFS=45%).であり、3者間DFSに差がみられた(p=0.0003)。

B) Barrio AV,らは、1954 年から2005年まで,合計 352例の葉状腫瘍を経験し293例を追跡調査した。その結果、全例女性であり 、平均年齢42歳, with 203 例は良性、90例は悪性であった。 平均追跡調査期間は7.9 年であり、 合計 35 例は2年以内に局所再発を来した。単変量解析において、断端遺残癌の有無 (P = .04)、線維性増殖の有無(P = .001),および壊死の有無 (P = .006)とが局所再発において有意差がみられた。葉状腫瘍が悪性に分類されることは、局所再発への高い危険因子とはならなかった(P = .79)。5人の遠隔転移症例は平均1.2年であり、それらの症例において共通した特徴として、腫瘍径が大きく (>/=7.0 cm)、境界浸潤、間質における過増殖、高い有糸分裂と壊死がみられた(Ann Surg Oncol. 2007 Jun 12 (in printing))。

C) Telli MLらは葉状腫瘍の局所再発率は15%、遠隔転移陽性率は5-10%、有用性が明らかとなった化学療法はなく、1cm以上の切除断端をとることがもっとも有効な治療法であると報告した(J Natl Compr Canc Netw. 2007 5:324-30)。


関連遺伝子:


 原因遺伝子については明らかにされていないが、Rhiem Kは618例の悪性葉状肉腫のうち10例においてBRCA1のgermline における突然変異R1699Wを有することを報告した(Cancer Genet Cytogenet. 2007 176:76-9)。

 Esposito NNらは、悪性葉状腫瘍において、間質のc-kit過剰発現がみられ、上皮性endothelin1の発現陰性が有意に認められたことを報告した。しかし、予後再発に寄与するのは断端の成績のみであるとした(Arch Pathol Lab Med. 2006 130:1516-21)。

(MyMedより)推薦図書

1) 幕内雅敏 監修、霞富士雄 編集:乳腺外科の要点と盲点 (Knack & Pitfalls),文光堂; 第2版版 (2005

2) 高塚雄一 編さん:乳腺外科ナーシングプラクティス,文光堂 2009

3) 女性の健康週間委員会 著・監修:最新版 女性の医学大全科―思春期 性成熟期 更年期 高齢期 女性の体の悩みや気になる病気の症状すべてがわかる (主婦の友新実用BOOKS Clinic),主婦の友社 2010
 

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